理屈に合うイージングまとめ

人間は今まで経験してきた物理現象と同じ動きをするアニメーションを「自然な気持ちよさ」として感じることができるみたいです。

そのUIアニメーションが何を表しているのか?によって、なるべく理屈に合うイージングを選択することで、気持ちの良いアニメーションを作ることができるんじゃないか、と最近思うわけです。

私はこれまでイージングは「Quadだと遅いからQuartにしてみようかな〜」のようなアバウトな実装をしてました。

しかしこの方法では、実装工程で何度も動きを見ているうちにゲシュタルト崩壊して気持ちの良いアニメーションが何なのか分からなくなってきます。
しかも、そもそもQuartの速度を下げてもQuadのグラフとは一致しません。物理現象とは無関係なアニメーションになってしまうのです。

実世界の環境を忠実に再現することができない以上、物理現象と全く同じ動きを実装することは不可能ですが、理屈ありきの実装をすればある程度近い動きにはなるはずです。

また、主観的な決めつけで実装する必要がなくなるので、万人受けしやすくなります。ゲシュタルト崩壊して妙にクドいアニメーションになってしまうこともありません。

そういうことで、物理現象ごとに理屈に合うイージングをまとめてみました。

(半分ギャグです)

自由落下

モノが上から降ってくるような演出の場合。
これは一定の加速度で速度を上げ続ける運動(等加速度直線運動)なので、移動距離は経過時間の2乗に比例します。
(空気抵抗は無視)

当てはまるイージングは easeInQuad です。

Quadだと動きが鈍くて気持ちよくないと感じることが多いですが、Quadの計算式は単純に時間の2乗しか使っておらず、重力加速度が加味されていませんので、そのへんはdurationで調節してあげます。

どういうことかというと、動かす要素が実世界でどのくらいの大きさで、どのくらい離れて観測しているのかを考えます。
エヴァの空から降ってくる使徒サハクィエルは、随分ゆっくり降りてくるように感じますね。
あれはドでかいものを遠くから観測しているからです。

具体的には、落下距離を決めてそれをピクセル換算できれば、下記計算式でdurationを求められます。
(重力加速度は9.8としてます)

[時間] = √([距離] / 4.9)

CSSプリプロセッサでMixinでも作ったら捗るかもしれません。

スライドイン

例えば、ハンバーガーメニューをクリックして画面外からオーバーレイ要素が滑り込んでくるようなアニメーションの場合。

摩擦によって常に加速度がマイナス方向にかかっていると考えられるので、自由落下の逆で easeOutQuad を使います。
(速度によって摩擦係数は変わってくるらしいが、その辺は無視)

durationの算出にも自由落下と同じ式を使えますが、スケール感に加えて加速度(摩擦係数)もイメージする必要があります。
これには物体と接地面の素材を想像して、摩擦がどの程度あるかをテキトーに仮定します。

[時間] = √([距離] / ([摩擦係数] / 2))

動摩擦係数でググるとけっこう見つかるので参考にしましょう

徐々に消える、フワッと色が変わる

これもよく使うアニメーションです。hoverでボタンの色を変えたりとか。

色が変わる遷移をミクロな世界で物理的に説明してみると、たぶん分子レベルで特性が変わっていくんじゃないかなと思います。

そんなときはこれ。放射性同位体の原子数の時間的変化の式。
放射性物質の半減期を計算するときに使うような式です。

原子的に不安定な状態である放射性物質は、放射線の放出とともに原子の崩壊をして、いずれは安定した原子に変化していきます。
毎秒10%ずつ変化する原子が2000個あると、1秒後には残り1800個、2秒後には1620個、というように。
こちらの説明が分かりやすいです)

このような遷移を表すイージングは easeOutExpo
(出典はこちら

イージング関数を最初に作った人はやっぱりちゃんと理屈ありきで作ってたんだなあと関心しますね。

durationは半減期一覧を参考に近しい値を計算します。

と言いたいところですが、比較対象の想像ができる人なんてまず居ないと思うので適当な値でイイ感じにしてください。

もはや主観入ってますが、難しいので諦めました。